長浜のお米ラボ
土地とか素材の研究所+キオスク
米農家の施主夫妻は、土地に根差した農法でつくられる米の魅力と農業の文化的な側面に自覚的だった。特に奥さんが、農閑期や農作業の合間に手仕事で作り出す民具や小物と、さまざまな地域食材を使った料理は魅力的で、マルシェや夫婦が招く客に振る舞われることで喜ばれている。農業生産を軸とした時に、その周辺に位置するさまざまな活動が、とても重要な農業の文化的な側面として立ち現れていた。また、土地に根差した自然農法と大きな収穫を期待する大規模農法の間で試行錯誤する中で、農業体験や自然農法で作られた米を味わうイベントなども、活発に実践されている。
ここでは、敷地とその周辺から長浜地域全体と琵琶湖の湖北地域、そして、日本全国へと「米」を主なメディアとして、さまざまな物の移動や交換と、人や出来事の連鎖が豊かに創生されている。施主夫婦の歓迎を受けた際に、敷地の隣の田んぼで採れた米が振る舞われた。米は、主人によって庭に用意された羽釜で焚かれ、奥さんの手による地域の野菜を使った郷土料理と共に、米の収穫された田んぼの土で作られた陶器に盛り付けられて振る舞われた。施主の試行錯誤による土地や素材の研究が結実したその実践を、もう少し多くの人とも共有し、もう少し多くの人へ発信したい、というのがこのプロジェクトの目的だと思う。それは、キオスクのようにささやかで身近な存在となる店舗、そして調理場や博物館、集会所、手仕事の作業場、あるいは夫婦の居場所かもしれない。
素材と居場所の動きリサーチ
食の風景と背景史
Credit
主要構造:木造
所在地:滋賀県長浜市
主要用途:店舗・厨房・展示空間等の予定
敷地面積:-
建築面積:-
延べ床面積:-
設計期間:2023年2月〜2023年9月
施工期間:2023年10月〜2024年4月予定
設計:冨永美保・市川竜吾・牧迫俊希/トミトアーキテクチャ
調査補佐:柳沢優志・藤城滉俊/トミトアーキテクチャ
構造設計:-
施工:-
模型写真:牧迫俊希