STONE BOWL

生きている素材
 洗面室に設えた古木材の机に置く洗面ボウルとして、石鉢を設計し製作した。バスルームの脱衣室と机作業をするワークスペースを兼ねた洗面室は、この住宅の中で、身体が建築とそこに設置されたさまざまな物に、もっとも直に触れ合う場所だ。心地よい手触りと重量感を感じることができるように、机・ボウル・タオルかけ・床・壁・棚などの各素材を仕上げ、鏡・窓・照明などによって光環境を整えた。
 あらかじめ選定されていた古木材を最大限使用するように、机と棚に加工した。壁面は、左官仕上げをヤスリがけすることで、細かな凹凸とツヤが同居する独特の質感を楽しむことができる仕上げとなった。御影石をビシャン加工にした大ぶりなボウルからは、ざらざらとした手触りとどっしりとした重みを感じることができる。それぞれの素材は、使うことでも変化していく異なった表情を持ち、それぞれに生きている。

近くの店の入り口脇に、古い石臼が地面に埋められた水場があった。石が水と出会うことで発する音、水を含むことで変化する石色、凸凹とした石の表情によって、水を使うとときに身体が心地よいと感じる「原初的な体験」があることに気がついた。

Credit

材質:御影石(中国産)
用途:洗面台ボウル
サイズ:W560×D470×H150
設計期間:2017年9月〜2017年10月
製作期間:2017年11月〜2017年12月

設計:市川竜吾・佐々暖子
製作監理:市川竜吾/建築築事務所
石材加工:厚見吉則/デコル
加工工場:中国福建省
完成写真:長谷川健太
記録写真:市川竜吾