参加型デザイン

 首都大学東京で、東京都都市づくり公社寄付講座「参加型デザイン実習」に5年間(わたしは担当助教として2017年からの3年間)取り組んだ。パブリックスペースを豊かにするような空間や装置を計画・制作・設置し、多摩ニュータウンの屋外空間で2週間実験的に運用する演習。饗庭伸教授、非常勤講師のアラキ+ササキアーキテクツの荒木さん、佐々木さん、珠穂さんと、受講学生たちと考え試みた実験的な取り組みから、都市と建築とそれらを取り巻くことがらをデザインするための知恵や気づきなど、たくさんの発見があった。成果は年度ごと5冊の冊子にまとめた。

 参加型デザインとは、一般的には、ユーザーがデザインの過程に能動的に参加することで、デザインされるものや空間がニーズに合っているか、使い易さはどうかを確認する助けをするデザイン手法である。そこからすると、この5年間の実習は、年を経るごとにその定義をずらしながら、新しいデザインの可能性を探り、そこから学びを得る実験だったのではないだろうか。どのような「デザイン」の可能性と学びがあったかに注目し、ここに取り上げてみたい。

・発見のデザイン
受講生たちは、敷地を調査する・デザイン手法を知る・インタビューする・場を体感する、といったように情報を集め、そこからデザインを考えた。ここで重要なのは、小さくてもキラッと光る「何か」を発見することだ。場所の魅力と人のニーズを発見した者は、それを組み合わせて標識や文字でささやかに愛でて見せ、スロープの空間性を発見した者は、その有用性と居心地をサポートする設えをつくったりした。他にも、音・温度・寸法などを発見した者も居たが、発見からデザインをつくるというよりも、発見そのものを周知したり、追体験させるデザインがとても魅力的で、都市空間にとってリアリティのある改修案の種にもなっていた。

・日常のデザイン
木陰の通路に、風になびくリボンと風鈴を散りばめた作品は、清涼感に気づく体験をいつのまにかの通行者の話題にしていた。屋台をつくったりベンチを改修するような案に比べたら、弱く頼りないデザインだが、そっと日常に忍び込んで公共空間の質を改善していたのだった。たくさんの人の参加や賑わいを狙った非日常的な企画も、ユーザーオリエンテッドなデザインを探る実験として有効だったが、日常を日常のままにリノベーションする試みは、積極的に関わらないがその場に参加しているたくさんの人の存在を顕在化していた。こうした見えない参加者の声やふるまいを収集するデザインが試されていたのかもしれない。

・参加のデザイン
見えない参加者に加えて、都市構造物・自然環境・天候というような事象も、もの言わぬ参加者(人では無いが)として、扱うことができるという実感と気づきがあった。道路脇の岩や花壇の縁に、きれいな板の座面だけを設えた作品は、あたかもそれらが元々「座って欲しい」とささやいていたようだったし、立体交差の橋下に場をつくった企画は、そこに立ち止まってみさえすれば、絶好の雨宿りと日影を提供し、橋上と共に立体公園のような公共空間を提供していた。可視化された参加者たち以外に五感をはたらかせることにも、デザインにとって本質的な学びがあった。また、客観的な計画者や観察者になってしまいがちな、受講生たち自身は、どのように自分たちのつくった場やプロジェクトに「参加」するのか?しないのか?という視点も、社会実験にも、実際の場づくりにも大切だったのではないだろうか。

・問いのデザイン
社会実験フェーズは、企画がどのような効果や課題を生むか、仮説に基づく問いに答えを得る期間だ。日々巻き起こる出来事や気づきに合わせて、物のレイアウトを変えたり移動したりできるような、時間のデザインがうまくいった企画が多くの学びを獲得していた。一方で、通行者たちの地域へのニーズを短冊に書き溜めて場を飾っていった企画は、答えを得るのではなく、次の問いを生み続けることで、デザイン行為を駆動させ続けていく仕組みとして興味深かった。実現はしなかったが、ゴミの少ないニュータウン空間にあえてゴミ箱を設置してみる案や、池のまわりをメッセージを書いたTシャツを着て毎日ランニングする案も、都市空間にとっての、未知の問いを発見するデザインだと考えると、ぜひまた実現してみたくなってくる。

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講座:参加型デザイン実習
担当教員:饗庭伸・市川竜吾小泉瑛一/首都大学東京
非常勤講師:荒木源希・佐々木高之・佐々木珠穂/アラキ+ササキアーキテクツ
技術指導:大木洋平/Oki furniture & Design
岡美里/アラキ+ササキアーキテクツ
実施期間:2015年4月〜2020年3日
対象地:多摩ニュータウン(2016〜2018年度:貝取豊ヶ丘、2015・2019年度:南大沢)
ゲストレクチャー:相葉夕輝・園田聡・大嶋亮・田中元子・連勇太朗
ゲストクリティーク:辻琢磨・松浦寛樹・川添善行・安倍良・冨永美保・田中元子・石川初
協力:多摩市・八王子市・UR都市再生機構・日本総合住生活・J Smile多摩八角堂・moi bakery
首都大学東京・多摩ニュータウン南側プロジェクト・多摩ニュータウン住民の皆さん 等
寄付:東京都都市づくり公社

本講座は、2020年からは東京都立大学都市環境科学部と、大学院都市環境科学研究科の選択授業
(担当教員:饗庭伸、非常勤講師:佐藤研吾、STA:市川竜吾)として継続している。

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